俺は全てを語った。 信じては貰えないだろう・・・ 深雪は、俺を抱きしめた後、俺の目を見つめた。 「伸二、疲れているんだね・・・ 暫く温泉かどっかで休もうよ・・・」 信じてもらえるとは思ってはいなかった・・・ ただ、無性に虚しさだけが、俺の心を刺激した。 そして、無き罪への罪悪感。 その二つが俺の中をぐるぐると駆け巡った。 次の日。 長期休暇を取り、深雪に言われるがまま温泉旅行に行く事になった。 「思い出を作ろうね。」 深雪は、そう言うと俺の手を引っ張り夜行バスへと向かった。 いつも以上にはしゃぎ。 いつも以上に甘えてきた。 一生懸命元気付けようとしてくれる気持ちが痛かった。 そして、すぐにそれが、顔に出てしまう自分が情けなかった。 「伸二?大丈夫だよ。大丈夫」 その度に深雪は、そう言って俺を励ました。 そして、引っ張られやってきた先は・・・ 景色が良く見える見覚えのある高い丘だった。 「ここから見える景色には家やビルしかないけれど・・・ その家やビルの中には、色んな人が居るんだよね」 深雪は何を言っているのだろう・・・ 「その人の中には、色んな事をやり直したくても・・・ どんなに頑張ってもやり直す事が出来ない人も居る。」 「でも、伸二は違うよね?」 「・・・え?」 「時間を戻れる薬、作ったんでしょ? それで、私を助けてくれたんだよね?」 「ああ・・・ でも、信じてくれてたのか??」 「あはは・・・ 伸二との付き合い長いもん。 嘘をついているか居ないかなんてすぐにわかるよ。」 深雪はニコリと笑い言葉を続けた。 「伸二は、過去にさかのぼる薬を作れたんだもん。 タイムマシンのような薬だって作れるよ。」 「深雪・・・?」 「もしも・・・ もしも・・・ その薬が完成したら・・・ 伸二が、私の背中を刺してね。 知らない人に刺されるのは嫌だけど・・・ 伸二ならいいかなって思うから・・・」 何を言ってるのだ?? 何が聞きたいのだ?? 「私も、手伝うから。 一生懸命手伝うから。 ね?いいでしょ・・・」 深雪の目は本気だった。 優しく微笑んでいるその瞳の奥に。 本当の優しさを感じてしまった。 「一生掛かってでも・・・ 一生掛かってでも、作ろうね」 「ありがとう。」 俺は、ただお礼を言うしか出来なかった。