11
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


待ち合わせの時間になっても、深雪は来ない… 

いつもの事だ… 

深雪は遅刻魔だからな・・・ 

だから、大抵は予定の時間よりかは、遅めの時間を予想している。 
それでも、俺は予定の時間よりも60分も早く来てしまった。 

「たまには、こっちが遅刻してやるか・・・」 

俺は、そう呟くと待ち合わせの場所から少し離れ、あの写真の場所を探す事にした。 

写真の写っていた場所・・・ 
それは、二人が出会うきっかけとなった迷子センターの前だ。 

親とはぐれてしまい、自分から迷子センターに向かった。 
しかし、迷子センターの扉の前に来た時、どうやって入ったら言いか迷っていると、
同じ幼稚園の制服を着た女の子が声を掛けてきたんだ。 

「一緒に中に入りませんか?」 

俺はその声で、我に返り声の方に目をやると嬉しそうな顔をした深雪が立っていた。
その目は、とてもキラキラと輝き、嬉しそうに口を小さくして笑っていた。 
時計を見ると、9時30分。 

「遅刻してなかったんだ・・・?」 

つい、思った事が口に出てしまった。 
どういう事なんだろう?? 
俺の知っている過去では、深雪は遅刻していたはずだ・・・ 
俺が過去に来たことで、少しは変わったのだろうか・・・? 

「ん?何の事?」 

深雪は、不思議そうに俺の顔を見ていた。 

「あ、いや・・・おはよう」 

「ん♪おはよう」 

何故だろう? 
深雪が物凄く機嫌がいい気がする。 
深雪は俺の腕を組むと、迷子センターの方に体を引っ張っていった。 

「覚えていてくれたんだね♪ 
 ちょっと、嬉しいな♪」 

深雪はそう言うと、迷子センターの扉を開けた。 
すると、深雪は大きな声を上げて迷子センターの人達に挨拶をした。 

「おはようございます。皆様! 
 20年前の今日、ここでお世話になったバカな二人です♪」 

迷子センターの人達は、きょとんとしていた。 

「深雪ちゃん、久しぶりだねぇ〜 
 その子が、例の子かい?」 

と、中年の男性の人が声を掛けてきた。 

「あれ?深雪の知り合い?」 

俺が、深雪に尋ねると深雪は頬を膨らませて、俺にこう言った。 

「も〜、あの時、お世話になった迷子センターの方だよ〜」 

すると男性は、ニコニコ笑いながら嬉しそうに話しかけてくれた。 

「伸二君だよね? 
 まさか、二人とも本当に来るとは思わなかったよ・・・」 

すると、奥の方から中年の女性のスタッフが現れた。 

「もしかして、あの時の二人? 
 懐かしいわねぇ・・・」 

俺には何の事かわからなかった。 
何の事かわからない顔をしていると、女性の方が教えてくれた。 

「あら?あの時貴方言ったのよ? 
 『お世話になりました。今すぐお礼をする事は出来ませんが・・・ 
  大人になったら・・・
  大人になった二十年後の今日、二人でまたここに遊びに来ます』って。」 

「あの時、ませている餓鬼だなって思ったけど、本当に来るとは思わなかったよ・・・」 

「そう?私は来ると思ったわよ? 
 あの時の、貴方の目、真剣だったもの… 
 だから、私、若い子に無理言ってシフトを交換してもらっちゃったんだもの♪」 

なんか、そんな事を言ったような気がする…

俺は何故だか恥ずかしいやら可笑しいやらで、笑ってしまった。 

「迷子は居ますか?遊び相手になりますよ?」 

おじさん達は嬉しそうに笑った。 

「ああ、居るよ。 
 泣いている子が一人居るから、よかったら励ましてやってくれ。」 

おじさん達に連れられて、俺たちはその子の居る場所へ向かった。 
深雪は、よっぽど嬉しかったのか体をべったりつけて俺の腕を握っていた。 







if 〜 未来で生きた君へ・・・

top Back Next