その商品には、値段が書かれては居なかった。 一流の商品には、値段が書かれていないと言う… 深雪スペシャル それは、正しくそれに等しかった。 目の前に出て来たもの… それは、チャーハンだった。 「…………これは?」 「チャーハン♪」 深雪が、満面な笑みで答えた。 すると、おばちゃんが現れて教えてくれた。 「『深雪スペシャル』は、前回深雪ちゃんが食べたモノなんだよ」 俺は、心の中でがっかりした。 「ごちそうさま」 深雪は、もう自分の分を完食したらしい。 俺も、待たせたら悪いとも思い急いで食べた。 「慌てなくて良いからね… ゆっくり食べて」 そう言いながら、深雪はじっと俺の食べる様子を見つめていた。 休みの日には、一緒に遊び。 仕事でも、ほぼいつも一緒に過ごしていた。 俺が未来から来た事すら、忘れた頃。 俺が、指輪を買った日がやって来た。 ジュエリーショップの店員が俺に話しかけて来た。 「プレゼントですか…?」 「…はい」 店員は、ニッコリ笑いながら、色々質問をしてきた。 「歳は幾つくらい? 指の太さは? お仕事は? 肌の色は? 誕生日は?」 この質問は、今も鮮明に覚えている。 俺は、一呼吸入れて質問に答えた… 「婚約者指輪なのですが…」 …………… ………… …… … 指輪は、買えた。 ただいつ、プロポーズするか… あの時と同じタイミングだと、深雪は死んでしまう… ふと俺は、『タイムマシン』と言う映画を思い出してしまった… その映画では、亡くなって恋人を助ける為に、色んな方法を試すものの、 結局その恋人は死んでしまう…と言ったモノだった… どうすれば、救えるのだろう… 俺が悩んでいると、携帯に深雪から電話が掛かってきた。 「もしもし…?伸二?」 「あ、どうした…?」 「あれ?元気ない?」 「いや、大丈夫…」 電話の向こうで、俺の気をつかってくれる声が聞こえる… とても心配そうな声だった。 「まぁ、いいや… 明日って、伸二も休みだったよね?」 「ああ…」 「水族館にいかない?? 加藤のおじさんにタダ券を貰ったんだ♪」 「それは、楽しみだな…」 「なんか、あった?」 「いや、大丈夫だけど?」 「ふ〜ん。 じゃ、今から、ティンカーベルに来れる?」 「わかった、すぐに向かうよ」 「じゃね〜♪」 と、電話が切れた。 ティンカーベルと言うのは、駅の近くにある喫茶店で、深雪のマンションの下に ある為、よく深雪との待ち合わせに利用している。