深雪は、薬学の知識、そして才能があった。 俺が、運の人なら深雪は天才だ… 一度、薬品に手を触れたなら、いつもの口調が嘘のように、丁寧になるのだ… 「さぁ…伸二。 貴方も、早く持ち場に戻って下さい。 あと、染色体の細胞分裂の報告書も忘れずにおねがいします。」 深雪が、若くしてプロジェクトリーダーを勤めている。 俺とは違い、やっぱり優秀だと思いながら… パソコンに向かって、レポートの記載に勤しんだ…。 俺は、暗記が得意だった。 一度見たら、忘れられない位、暗記力があった… そう言えば、俺は深雪の隣りに居たくて、薬学の道に進んだんだっけな… と懐かしみながら、文字を入力して行った。 覚えて居る内容を入力するだけだったので時間は、さほど掛からなかった。 レポートを、書き終えると、実験マウスの所に向かった。 何年立っても、このネズミが可哀相だと思う… 背中に耳まで生やして… 背中に耳? 俺は、驚いた。 どうして、俺のマウスの背中に耳が…? 俺が驚いて居ると… 「すまない、すまない… 筋力増加剤を開発していたんだが… マウスが逃げてしまってね…」 「それは、構いませんが… なぜ耳が??」 「廃棄される所だったんだのでな… 勿体ないから連れて来た。 耳は、移植用だとさ…」 そうか、そんかのあったなぁ… 「へぇ…」 俺は、そう声に出した。 「それより、お前さんレポートは?」 「完璧♪」 俺は、グッドサインを加藤さんに贈った。 マウスの方は特に問題はなく、特に報告すべき事はなかった為… 俺は、深雪の様子を見に行く事にした…。