銘は、寂しげな表情で俺を見つめた… 「話は、加藤君から聞いたよ…」 「何を?」 「貴方が、前の婚約者を助けるために、タイムマシンを買おうとしているって… その為に、若返りの薬を開発しようとしているって…」 「そうか…」 俺は、それ以上彼女には何も尋ねなかった… 彼女は、無言で、瓶の蓋を開くと… 「手伝うよ…」 と、小さく呟いた… 若返りの薬とは、理論上可能な事であり、薬学技術の進んだ、現在に置いては、 かなり現実的なモノであった。 俺達は、朝も昼も夢中で開発にいそしんだ… 薬の試作品【A201】が、完成したのは、それから3ヵ月後の事だった… 完成した時、妻が一言呟いた。 「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」 「あったな… そんな話…」 と、俺達は失笑した。 理論上、この薬を飲めば、接種したこの水分が血液に変わり、内蔵機能から細 胞の活性化が起きて… 肌や髪等が若返ると言う仕組みだった… しかし、この薬には欠点があった。 一ヶ月以上、飲み続けないと効果が期待出来ないのだ… 俺達は、それを承知で、薬の開発をしていた。 「じゃ…飲むね?」 何が起きるかわからなかった。 だから、俺は妻の見守る中、薬を飲み込む前に、少し、舐めてみた。 味は、しなかったが… 少し舌がぴりぴりした。 「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」 先ほどと同じセリフが、聞こえて来た。 「あれ? さっきも、同じ事言ってなかった?」 俺は、思わず尋ねてしまった。 すると、妻は不思議そうな顔をしていた。 「デジャブ?貴方、疲れすぎてるんだわ… これが、終わったら、お休みになって…」 俺は、もう一度、さっきと同じタイミングで、薬を舐めてみた。 「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」 「……………」 時計の針を確かめると… 時間は戻っていた。 俺は、薬を予備の分までかき集めると、その薬を全てを一つのコップに集め、 飲み干した。 妻は、きょとんとした顔で、俺を見ていたのを覚えている… もしかすると、過去へ戻れるのかもしれない… 俺は、なぜだか… そう、期待せずには居られなかった…