03
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手術中のランプが消える。 

父親が、担当医に話を聞いている。 

声は、こちらまで… 
聞こえて来る。 

「出血の量が酷い上に… 刺した包丁の部分に毒が塗られていたみたいで… 
大変、残念な結果になってしまいました」 

「残念な結果と申しますと…」 

「深雪さんは、お亡くなりになりました…」 

深雪が死んだ…? 

俺のせいだ… 

「こちらとしても、全力を尽くしたのですが…」 
俺が、場所さえ、間違っていなければ… 

俺が、もっとしっかりしていれば… 

「毒の回りが早く…脊椎まで達してまして…」 

医者が何かを言っているようだが… 
俺には、何も聞こえなかった… 

ふと、気が付いた時、俺が座る、イスの隣りに、深雪の父親が座っていた… 

「あいつは、笑っていたか?」 

「え?」 

俺は、父親の顔を見ると、疲れた顔で俺の顔をじっと見ていた… 

「君が、南伸二君だろ? 娘の…深雪の婚約者の…」 

「はい…」 

俺は、歯を食いしばった… 

殴られると思ったからだ… 

この人になら、例え殴り殺されても文句は言えない… 

俺は、本気で、そう感じていた… 

しかし、帰って来た言葉は… 

「あれは、最後まで笑っていたそうじゃないか… 
幸せな顔をして… 
『私、あの人と結婚するんです』って、救急隊員の人に言ってたそうなんだよ…」 

親父さんは、涙を堪えながら言葉を続けた… 

「妻が亡くなってから… 
あの子は、笑わなくなったんだ… 
なのに、君と付き合いだした途端… 
急にあの子の中で、笑顔が戻ったんだ… 

あの子は、笑ってたかい?」 

俺は、涙を押さえながら… 

「はい…」 

申し訳ありませんでした。 
娘さんを守れなくて… 

そう、俺は言うつもりだった… 

だけど、それ以上の言葉は、涙が溢れそうで言えなかった… 

親父さんは、俺に一言こう言った。 

「君は、幸せになれ… 
娘の分も… 
幸せになれ…」 

「でも…俺は…」 


「伸二君… 
ありがとう…」 

どうして、責めない… 
『ありがとう』 
そんなセリフもらえる立場じゃない… 

俺は、震える手を、イスにたたき付けながら… 
声が出ない涙を流した…



if 〜 未来で生きた君へ・・・

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