待ち合わせの時間は、朝の六時… 大学一年の頃だっけ… 朝、眠気眼の、深雪を無理矢理起して、この場所に呼び出して… そして、告白したのは… そう言えば、あの時も、怒ってたよな… 『私、パジャマなのに… いきなり告白なんて、ひどいよ〜』 って… 俺が余韻に浸っていると、ナイフを振り回している男性に、 若い女性が襲われているのが、目の前に入って来た… 俺は、何も考えず… その子を助けようと、その男に蹴りを入れると、男は、すぐに逃げて言った… 「あの… ありがとうございます…」 少女は、照れくさそうに、お礼を言ってくれた。 「いや… 気にしなくていいよ… それより、危険だから帰った方がいいよ…」 「あ、はい…。 では、失礼します。」 少女が走る度に、ポニーテールが上下に揺れたので、印象に残った… 俺は、振り替えり、彼女が来るのを待った… すると、川を挟んだ向こう側のベンチに座っている彼女の姿が目に映った… 「やばい… 向こう側だったのか…」 俺は、走って彼女の元に走った… 深雪は、俺の姿に気付くと、顔を膨らませながら 「もう、伸二が遅刻するなんて、信じられない」 と、言った。 「早く、早く♪」 と、俺にせがんだ。 無邪気な顔が、可愛くてとても愛しく感じた。 「深雪… 俺は、収入面から、今はすぐに、君を幸せにする事は、出来ない… だけど、だけど…」 深雪は、うん、うんと相槌を打ちながら、俺の話を聞いてくれた… 「だから、三年後。 それまでに君を絶対に幸せにする事を、この指輪に誓います。」 彼女は、俺にもたれ掛かって来た。 俺は、それがOKのサインだと思っていた… だが… 彼女の様子が少し、おかしかった… 俺は、抱き締めた彼女の手を見ると… 真っ赤だった… 彼女の足下には、包丁が転がっており… そして、その先には、彼女の血がこびり付いていた… 向こうの方で、男が取り押さえられていた… 恐らく、先ほどの男だ… 彼女は、弱々しい声でこう言った… 「『受け取って下さい』は?」 俺は涙を流しながら… 「指輪を受けってください」 と言うと… 彼女は幸せそうに指を差し出した。 そして、俺は、震えながら、その指に指輪をはめた。 「ありがとう… 一生、大切にします」 彼女は笑いながら俺に言った。 救急車のサイレンが聞こえる… 彼女が、救急隊にさらわれるまで… 俺は、放心状態だった… 病院の待合室では、深雪の父親が来ていた… そうだった… 深雪は、母親を早くに亡くして… 父親一人で育てられたんだよな… そのせいか… 料理が凄く上手で… 深雪の父親は、無言で俺を睨んでいた… 男手一人で育てた娘を俺は守れなかったんだ… 恨まれて当然なんだ… 俺は、自分を攻め続けた…