待ち合わせの時間になっても、深雪は来ない… いつもの事だ… 出会ったのは、幼稚園の頃… 付き合いだしたのは、大学に入ってから… 付き合いだしてから… 気付いた。 深雪は遅刻魔だと… だから、大抵は予定の時間よりかは、早めに時間を伝えるようにしている… 「ごめ〜ん。 待った?」 その呑気で悪いともヒト欠片も感じてない声で、背後から声を掛ける女性の声… 振り向くと、そこには寝癖のままの深雪が居た… もう… 24だろ…? 心の中で、呟いた…。 「ああ… 小一時間程、待ったよ…」 「えぇ〜そんなにも〜? 合鍵渡してあるんだから、起しに来てくれたらよかったのに〜」 と、深雪は、顔を膨らませた… 「……待ち合わせじゃないと、デートじゃないって、深雪、言ってなかった?」 すると、罰が悪そうな顔をして、照れくさそうにこう言った… 「しゅ…主役は、遅れて来るもんなのよ…」 「……じゃ、俺は脇役?」 「さぁ…付き人Aよ! 姫を、水族館まで案内せい!」 と、スタスタ歩いて行った。 「はい、はい。 おうせのままにお姫様…」 すると、無邪気な顔で、俺の腕にまとわりついて来た。 いつも以上に、ニコニコと笑っていた。 「なんか、今日はご機嫌だな?」 「だって、伸二… 最近、全然構ってくれなかったから…」 「そ、そうか…?」 「そりゃ… お薬の開発は大切だけどさ… 私の事も、大切にして欲しいな…」 「…ごめん。 でも、俺は薬は愛してないけど… 深雪の事は…」 俺が、そう言いかけた時、深雪は俺の口に飴玉を放り込んだ。 「そう言う事は、デートの最後に言って欲しいな〜♪」 と、明るい口調で言った。 「って言うか… 深雪だって、仕事で休みが中々とれないんじゃないか…」 「ふ…私は、薬を愛しているもの…」 と、また悪戯ぽっく笑った。 チケットを受付で渡して中に入ると、ヒンヤリとした空気が妙に心地よかった。 もう、夏なんだよな… 変な話だが、今になって、そう感じて… ひんやり感じた空気が寒く感じた時… 彼女の肌が暖かく感じた。 そして、俺は、彼女に引かれるままその日を過ごした…。 …………… ………… ……… …… … 「ねぇ… 私の事、好き?」 ラブホテルのベットの上で、彼女が俺に囁いた。 「ああ…」 俺は、そう言うと、彼女の肩を抱き締め体を引き寄せた… 「どれくらい好き??」 俺は、「そうだな…」 と言いつつ、ベットから降りると、おもむろに鞄から、指輪のケースを取り出した。 「今すぐに… とは言えない… だけど、三年後の今日。 それまでに、この愛が続くなら… 君の幸せをこの指輪に誓います…」 俺は、指輪を彼女に差し出すと… 彼女は、少し切なそうに答えた。 「今は、受け取れないよ…」 「え…?」 俺が、きょとんとしていると… 彼女は顔を膨らませた。 「ラブホで、プロポーズとか、ヤダよ…」 「いや、プロポーズじゃなくて、婚約と言うか… なんて言うか…」 「一緒の事よ… だからね… 来週…」 「来週?? ああ… 俺が告白して、付き合い始めたあの日か…」 「うん。 あの日、あの場所であの時間にもう一度、言って欲しいな…」 「わかった… だけど、お前、起きれるのか…?」 「起きれるわよ! 良い?会ってすぐよ? でないと、緊張しぱなっしで死んじゃうんだから!」 「わ、わかったよ…」 深雪は、シーツを上にあげ、俺の入るスペースを開けると… 「ねぇ… もう、一回…」 と、色っぽい声で俺を誘った…。