よく、子供には人の死の現場を見せるのはよくないという人が居る。 確かに、元気だった母親の姿を知っている子供に、 その母親の死を見せるのは、きつく辛いかも知れない。 やがて、子供達は大人になる。 その時、母の死に際を見れなかった事を、後悔しないと言い切れるだろうか。 血を分けた親子なのだ。 子は親の温もりを…… 親は子の温もりを…… そして、暖かい肉声を…… 最後の最後まで聞く権利はあるはずなんだ。 そして、子は命の大事さを学んでいくのではないだろうか? こう言った経験を済ませる事により、息子には母親の優しさと厳しさを、 娘は母親の温もりと強さを、こうやって引き継ぐのではないか? 私は、そう思えて仕方がなかった。 その日、萌は、子供達に見守られる中、ゆっくりと息を引き取った。 享年26歳 私と同じ年だった。